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王様の耳はロバの耳

存在 * 第四幕−4

不憫なハトヤ隊員を、
スクリーンで見てきました (^_^;)

感想その他はまた後日として、
初日挨拶では、無精髭だったようですが、

すぐまた病院ロケもあったようなので、
ヒロくんのその後が気になります。

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でも今日も、
ケンの記録をつづけます。

ケンの感情の爆発が静まるのを待って、
ロスコは口を開きます。

確かに自分は、自分の作品がどう見られるのかが不安で仕方ない。
でも、今度の連作は、互いに共鳴し合い、助けあうはずだ、と。

何より、この連作のためだけに作られた「場」に
それらは飾られるのだから、と・・。

「瞑想の場?」
「そう。」

「他に何も介在しない?」
「そう。」

「神聖な?」
「そう。」

「神殿のような?」
「そう。」

恍惚とした表情で肯定するロスコの背中に、
ケンは冷ややかな声で言い放ちます。

「・・フォーシーズンズ・レストラン。」
「・・・」

こわばるロスコの表情。
ケンは諦めたように、つづけます。

「アンディ・ウォーホルなら、ジョークぐらいわかってくれる。」
「・・・」

「お前はわかってない。」
「大金持ちのためのレストランですよね、わかってます。」
「いや、私の意図は・・」

弁明しようとするロスコに口を開かせず、
ケンは責め立てます。

「あなたは、コマーシャリズムは否定しながら、
 でも金はもらう!

 瞑想の場を作っているのだ、と自分を騙しながら、
 富裕層のダイニングルームの壁をせっせと塗っている。

 これらはみんな、世界で一番高価な飾りに過ぎないんだ!」

痛いところをつくケンの言葉に、
ロスコは力弱く反駁します。

「私がなんでこの仕事を受けたと思う?
 ・・・
 お前なら断るか?」
「瞬時に。」
「言うのは簡単だ・・」

そして、今までロスコを憎んでいるかのように
責め続けていたケンの言葉に、

隠し切れない親愛の情が溢れて、
悲鳴のように響きます。

「あなたはもう金だって名声だってあるのに、
 なんでシーグラム・コーポレーションなんかのために
 自分を騙し続けるんですか?!」

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そうです、ケンはロスコを尊敬し、慕っているからこそ、
こんな仕事をしてほしくない、と思い始めていたのです。

けれどロスコは、この連作で、
金持ちどもの食欲を失わせてやるのが本来の目的だ、
と弁明します。

そして、ケンに酒の入ったグラスを勧めます。
驚くケンは、自分の考えが間違っていたのかと迷い始めます。

「すっきりしない。・・・
老いたる獅子はなお吠えて、真実を突き、
ブルジョアに罰を下そうというのか?」

しかし、やはり首を振ります。

「いや、そんなはずはない。
あなたの絵は武器ではない。
あなたはこの絵たちを貶めるようなことはしない・・」

「そうか、最初はそういうつもりだったとしても、
作品が生まれたら、あなたは迷いだしたのではないですか?
それで今、動けなくなっているのではないですか?」

罵倒していたときの乱暴な言葉ではなく、
また敬語に戻って、ロスコを理解しようとするケン。

それなのに、ロスコはまだ強がろうとします。

「いや違う。
私は、これらの絵が響きあう「場」を創ろうとしているんだ。」

虚しく響く、彼の言葉。
けれどしばし黙りこみ、やがて尋ねます。

「・・まだ私は自分を騙していると思うか?
 壮大なる自己欺瞞だと・・・」

ケンは悲しげに目を伏せたまま、答えません。

「答えろ」
「・・」
「答えろ!」

ためらったのち、涙混じりの声で、絞りだすように叫ぶケン。
「はい!」

ついに最後までロスコのあり方を否定してしまい、
悄然と尋ねるケン。

「・・僕は、クビですよね?」

しかし帰る準備を始めたロスコは、きっぱりと言います。
「クビ? いや、今初めて、お前は存在している。」

この言葉に、聞いている私も胸が震えました。
ロスコが初めて、ケンを一人前の話し相手と認めてくれた。

2年間のアシスタント生活の末に、本音を爆発させたのに、
この瞬間が突然訪れて、ケンはどれほど驚いているか。

事実、一人アトリエに残されたケンは、
呆然と立ち尽くしています。

それから、静かにロスコの作品に向き合い、
そこでケンにスポットライトが当たって、暗転します。

この場面で、公演前半ではケンが
床に腰をおろして上手の絵を見つめていたので、

静かに深く物思いにふけるケンの横顔が見えて、
最初はその演出が好きでした。

それが、後半では、立ったまま
正面の絵を見つめるようになり、

客席からはケンの後ろ姿しか見えなくなり、
はじめは残念に感じました。

ところがある日、そのときケンが、
絵を見つめながら、カクンと首をかしげたのです。

その立ち姿が、背中が、
泣きそうなほど私の心をギュッと掴みました!

なんでだかわからない、
ただ、その背中が、ものすごく多くを語っていて。

猫背でもなく、昂然と背を反らしているのでもなく、
ただじっと、静かに、深い愛情を持って、

おそらく、誰よりもその絵たちを理解しようとして、
語り合っている背中。

絵に囁いているかのような、首のかしげ方。

その時にはどうしてだかわからなかったけれど、
その姿が胸を突いて、

その日は、そのワンシーンを見れただけで感激するほどでした!

・・そして今、英書を読んではじめて、
その感動の理由がわかりました。

彼のその立ち姿は、
自分の絵を見つめるロスコの姿とそっくりだった・・

と書かれていたのです。

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ああ、それで。
それであんなにも、ケンのあの後ろ姿が心に残ったのか。

前半の、座って見ているケンは、
まだロスコへの理解に自信がない若者が、
戸惑っているようにも見えました。

けれど、知らず知らずのうちに
ロスコと同じ仕草で正面の絵を見ているケンは、

誰よりも深くロスコを理解し、

そしてだからこそ、ロスコの心情を思って
ともに嘆き、苦しんでいたのだと思います・・

そこに立っているのは、もう無知な助手ではなく、
きちんと見る目を持った、一人前の新人画家でした。

そして、暗転する時の、
ふっとかき消えるようなライティングも、

いつも素晴らしく美しく、
感動を高めてくれました。

旬くんの美しい立ち姿、
黙っていても雄弁な背中、

それがあってこそ、このケンが主役の第四幕が、
美しいエンディングを迎えたのだと思います。

旬くんの演技力と魅力のすべてが、
昇華したようなこの幕を見れて、

本当に幸せでした・・ (*^^*)


つづく
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by harupyonri | 2015-10-26 18:11 | 小栗旬 | Comments(0)