2014年 06月 13日
右肩に置かれた手
いまだに頭の中は、彼のことばかり考えています。
そう、問題は、あの「肩に置かれた手」なんですよね〜 (>_<)
そして、リピしていて思い出したんですが、
そもそも、始まりもそこからでした。
入院中の病院で、初めて女の子の幽霊に出会った時。
女の子の抱いていたクマのぬいぐるみを取り落とし、
号泣しているお母さんたちを見て、呆然としている場面。
看護師さんが安吾くんの右の肩に手をかけて、
ビクッと振り向いた姿が、やけに印象的でした。
そして、言わずもがなのラストシーン。
こうして見比べてみると、髪型といい、やつれ方といい、
とても同一人物とは思えませんが・・(T_T)
彼の肩に手がかけられた時、
それが、安吾くんがBORDERを超えた象徴のような気がしました。
第一話では、
生者と死者の境界を超えた時。
ラストシーンでは、
正義と悪の境界を超えた時・・・。
もちろん、偶然の演出だったのかもしれませんが、
細かいところまで完璧に作りこんでいた脚本ですから、
もしかしたら、そんな意味合いもあったのかも??
で、肩にかけられるのが頭だったりすると、
それは、お互い鼻についてた同僚が、ライバルという境界を超えて、
信頼できるバディに近づいた時なんですかね〜(^o^)
でも、ラストシーンで安吾が超えた境界は、
単純に「正義と悪」とかの言葉では語れないものでした。
そもそも、脚本家さんの最初のコンセプトに書かれていたのは、
ーー等価であると信じていた正義と法のあいだに、実はBORDER(境界線)が引かれていることを目の前に突きつけられた石川は、とうとうある決断を下す。
安吾くんにとっても、そして私たちの実感から言っても、
法と正義は全然イコールではないですよね?
何が正義なのか、真実がわからないことが多々あるから、
便宜的に決められたルールが、法律なんです。
だから最初から安吾くんは、
正義のためなら、ためらいもなく法を破ります。
そういう違法捜査を、
私たちはどこまでなら受け入れられるか?
証人のでっち上げや、ハッキングぐらいなら、
「よくやった!」と快哉を叫びましたよね。
ネットで噂を流して社会的に制裁を加えるという手法は、
ああいうクズ相手にはそれしかないような気もしましたが、
おそらくは、意図した以上に炎上し、捏造が広がっていくのがネットですから、
その怖さを誰よりも知っているサイガーが、止めてくれたんですよね。
そして、最終話の安吾。
証拠を捏造しようとするあたりまでは、してやったりでしたが、
公務執行妨害をでっち上げるために自傷する時の安吾は、
もう、正気の目をしていませんでした。 (>_<)
自分の捏造が成功していると信じて、
「楽しみだな」と安藤に言うときの安吾も、
自分が人を裁くことのできる絶対者になったかのようで、
まさに、「強すぎるヒーローは怪人になってしまう」姿でした。(T_T)
いくら安吾が真実を知っていても、
そんなに急ぎすぎるな、そんなに無茶をするな・・と、
あまりに暴走する姿には、恐怖を抱いてしまうんですよね。
そして、最後の屋上。
終わってから皆さんの感想を探しまわって読み漁るなかで、
オンエア時のネット実況も読むことができたんですが、
安吾が屋上で安藤を脅した時、
「こんなやつ、突き落としちゃえ!」
「殺してほしいけど、どうせできないんだろうなー」
という書き込みであふれていたんです。
すっかり引き込まれて「犯人憎し」になっていた世論感情。
ところが、安吾がフッと突き落としてしまったとたん、
手のひらを返すように
「え〜〜!!!落としちゃったぁぁぁ」
「それはやっちゃダメだぁぁ」
という悲鳴の嵐になり、「よくぞやった」という人は誰もいなかった。
まさにそこが人の気持ちのBORDERで、
「殺したい」と願うことと、実際に「殺す」ことは、
天地ほども隔たっている・・。
それなのに、その間にある境界は、
実はすごく幅が狭くて、
フッとした気持ちの隙間で、
いともたやすく超えてしまうことがある・・
つまり、崖からほんの半歩踏み出しただけなのに、
落ちた先は二度と戻って来られない奈落の底。
一度超えたら、
取り返しのつかない境界があることの怖さを、
小栗・安吾がまざまざとその涙で語ってくれて、
胸に深く深く突き刺さりました・・。
(以下、蛇足です)
そしてね、思ってしまうんです。
あれほど潔く、インパクトのある終わり方をしたのだから、
万一、続編があったとしても、
中途半端な夢オチはないと思います。 (^_^;)
だからここでだけ、かなうことのない救いが欲しいんです。
お目汚し、どうかお許し下さいね。
* * *
たとえば安吾の肩を、激しく揺する手。
「石川、おい、石川っ!」
比嘉の連絡で駆けつけた立花が、
斎場の近くで意識を失って倒れていた安吾を、必死に呼び起こす。
「大丈夫なの?」
いつになく心配そうな瞳で、比嘉が見つめてくる。
「おまえ、またうなされてたぞ。とにかく病院で検査だ。」
と、有無をも言わさず安吾を担ぎ込む立花。
「レントゲンでは、まだ銃弾は元の位置にありました。
しかし、倒れたということは、もう一刻の猶予もないということです。
すぐに摘出手術をすべきです。」
今回ばかりは、きつい口調で言い渡す主治医。
やがて、病室に見舞いに訪れた班長が、
安吾のベッドの横に腰掛けて、諭すように語りかけます。
「石川、お前の言うとおり、犯人は安藤に違いない。
だけどな、今は待て。
5年かかろうが、10年かかろうが、確実な証拠をつかむんだ。
俺はおまえに、刑事としての誇りを失うようなまねはさせたくないんだ・・」
(俺はさっき、悪夢の中であいつを殺していた・・。
もしあの時、倒れずにあいつのところに駆けつけていたら、きっと・・)
病室の窓からは、
いつの間にか降りだした雨。
自分の中の黒々としたものが、胸にポッカリと開けた穴に、
飲み込まれそうになる安吾。
自分が何をしでかすかわからない不安。
どこまでが刑事にとっての正義なのか、
どこまでが人としての正義なのか・・。
(俺はなんで生き返ったんだろう?
なんとしても被害者の無念を晴らすことが、その答えだと思ってたのに。)
「おまえ、死ぬなよ。」
死んだ兄さんの声が聞こえて、
ハッとして振り向く安吾。
そこには、心配そうに覗きこむ班長がいます。
そして、そっと安吾の肩に手をかける班長。
その温もりが、こわばっていた安吾の心を少しずつ溶かしていきます。
(あちら側へ行かないでくれ!)
兄の、仲間たちの、そして被害者やその家族たちの、
安吾への思いが、
肩に置かれた手から伝わるかのように・・。
* * *
そんな風に、最後にもう一度、
右肩に置かれたみんなの手が、安吾に境界を超えさせてくれないでしょうか?
怪人から人へと、
死から生へと、
憎しみから愛へと・・。
かなわぬ願いと知りながら、
そんな夢をみる今日このごろです。 (;_;)